ビジネス・ブランド戦略と商標権

ネット販売と商標登録

<小売商標取得の必要性>

インターネット経由で商品を販売する場合、商品商標のみならず小売商標についても商標権を取得したほうがよいと言えます。

例えば、アクセサリーをオリジナルブランド名「○△□」で販売する場合には、商標「○△□」について、指定商品を「第14類 身飾品」とする商品商標について商標権を取得する必要がありますが、さらにオリジナルブランド名「○△□」をネットショップの名前にしたい場合には、「第35類 身飾品の小売又は卸売の業務において行なわれる顧客に対する便益の提供」という小売商標について商標権を取得する必要があります。

なぜ必要なのか、

商品を購入する顧客は、「商品をどの店で購入するか」も重視するからです。

同じ商品を買うにしても、お店によって接客方法や店員の商品知識等は異なるので、それらを期待する顧客は、「良い接客や店員の豊富な商品知識」が印象付けられた店舗で商品を購入するはずです。その印象と結び付くものが店舗名などの「小売商標」なのです。

そうとすれば「小売商標」には要保護性があり、商標登録の対象となります。

特にインターネット経由で商品を売買する場合、一般的に買い手である顧客は「信用に欠けるショップ」から商品を購入しようとは思いません。代金を振り込んでも「商品が届かない」や「ニセモノが届いた」といったトラブルが想像されるからです。

このような顧客心理は、実在店舗よりも、ネットショップのほうがより顕著であると思われます。

そして、ネット販売を悪用する者は、よい印象が化体したショップ名を模倣したりするので、そのような模倣店舗を排除するためにもネットショップ名を小売商標として登録するほうがよいと思われます。

<小売商標の類似範囲>

量販店や販売業者は、多種類の商品を取扱っていますので.小売商標の類似群はこれに対応するように広く設定されています。つまり小売商標は類似範囲が広いため、取得できると商標権の効力範囲が非常に大きいものであり、登録排除効果及び行為禁止効果が大きいものです。しかしながら、類似範囲が広いということは権利取得に際しては邪塵が多いということですから権利の取得が難しい場合が多いです。とくに小売商標は改正法により後から追加された制度ですから、取得しようとする分野に既に商品商標が存在する場合が予想されます。小売商標は商品商標とも類似関係を審査されますので権利取得が難しいのです。

例えば、食料品スーパーの場合46箇の類似コードを有し、(商品区分でみると5件分)、また家電量販店の場合の小売商標の類似範囲は、12箇の類似コードを有し(商品区分でみると7件分)ます。

<小売商標の継続的使用権>

小売商標の登録をしない場合であっても、平成19年3月31日より前から「不正競争の目的でなく」使用しているときは、「業務を行っている範囲内において」その使用している商標の継続的使用権があります(平成18年改正法附則6条1項)。この場合、隣接都道府県での周知商標となっているときは、上記業務範囲にかかわらず、支店の拡張的出店等をしてもその商標の使用をすることができます(同3項)。

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